ラヴィアンローズの失脚



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今となっては昔語りだ。
東雲の姐さんは護衛で土方さんにくっついてくる俺にとても優しくしてくれた(廓の女の人は皆優しかったけれど彼女は特別だ)。いつもにこにこと大人しく笑う彼女が万年仏頂面の土方さんの横に並ぶのは酷くちぐはぐで、それゆえ何か足りないものを補うようにしっくりときた。

里に弟を残して来た、とあの京独特の発音で微笑った。こーんなに大きゅう無かったけど沖田はんに似てる、と身振り手振りを加えて懐かしそうに目を細めた。今度は俺が、里に姉を残して来た、と白状する番だった。姐さんは愉しそうに笑みを深くして何故、と赤い唇で聞いた。いま思えば、姐さんはあの指で紅を注していたのだ。俺は確か、近藤さんに着いて行きたかったのと世話が焼ける土方さんの子守だ、と言ったのだった(コルァアア何言ってやがる総悟ォ!・ホラもうこの通り世話が焼けるんでさァだからさっさと俺に副長職譲って死ね土方)。姐さんはこわいこわい、とくすくすひとしきり笑った後、俺の頭を撫で、どうし、と小作りな唇で紡いだ。どうし?、と尋ね返した俺にただただ今は違う女の人に酌をしてもらっていた土方さんの方を意味ありげに見て、また、どうし、と小さく微笑った。遊女の勘は鋭い。ああ、そういった意味でも俺らは同志、なのに違いなかった。
アンタにゃわからんだろう、こんな俺らの考え。知らなくていい。